SARS-CoV-2メインプロテアーゼ阻害剤としての柑橘系フラボノイドの計算機による同定

Gogoi N, Chowdhury P, Goswami AK, Das A, Chetia D, Gogoi B.
Mol Divers. 2020 Nov 25:1-15. doi: 10.1007/s11030-020-10150-x. Online ahead of print.

[概要(翻訳版)]
ワクチン開発が猛烈な勢いで進められているが、COVID-19の原因となる重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に対する有効な抗ウイルス剤は現在のところ存在しない。そこで、本研究では、天然に豊富に存在するフラボノイド化合物が、このウイルスに対抗する抗ウイルス薬として期待できる可能性を探ることを目的とした。SARS-CoV-2の高度に保存されたMain Protease(Mpro)に対して、44種の柑橘系フラボノイドのライブラリーを分子ドッキングによりスクリーニングした。Mproの共結晶阻害剤よりも優れたCDockerエネルギーを示した化合物は、さらに活性部位内での柔軟なドッキングによって再検証され、その後、薬物類似性と毒性パラメータが評価された。さらに、無毒性化合物は分子動力学シミュレーションを行い、3D-QSAR解析により活性(IC50)を予測した。その後、最適な化合物の水素結合と脱水反応を解析し、Mpro への結合親和性を評価した。その結果、44種の柑橘系フラボノイドのうち、5種の化合物が共結晶リガンドよりもMproとの結合エネルギーが低いことが確認された。さらに、これらの化合物はMproの活性部位の重要な触媒残基であるHis41とCys145ともH結合を形成していた。また,Drug likeness filter を通過した 3 種類の化合物は,MD シミュレーション中に安定なコンフォメーションを示した.これらの化合物のうち,最も低いIC50値を予測したのはタキシフォリンであった.したがって、本研究は、タキシフォリンがSARS-CoV-2メインプロテアーゼに対する阻害剤となる可能性を示唆しており、現在進行中のパンデミックの管理に向けてin vitroおよびin vivo実験によってさらに分析することが可能であると考えられる。

[原文:Linked PubMed®]
Computational guided identification of a citrus flavonoid as potential inhibitor of SARS-CoV-2 main protease