生理活性フラボノイド タキシフォリンは培養ヒト脂肪細胞の分化および炎症性サイトカイン インターロイキン-6の産生を抑制する
Sakurai M, Hu A, Yamaguchi T, Tabuchi M, Ikarashi Y, Naraoka Y and Kobayashi H
Received Date: February 15, 2022,Published Date: February 25, 2022,DOI: 10.23880/apct-16000195
[概要(翻訳版)]
背景:タキシフォリンは強力な抗酸化活性を有する生理活性フラボノイドであり、肥満に関連する糖尿病性腎症や糖尿病性心筋症に対する保護作用をはじめ、複数の薬理作用を示することが報告されている。しかしながら、肥満や糖尿病と密接な関係にある脂肪細胞に対するタキシフォリンの作用については、ほとんど知られていない。
目的:本研究では、ヒト前駆脂肪細胞(HPAds)を用いて、脂肪細胞における分化および炎症に対するタキシフォリンの直接的な作用を明らかにすることを目的とした。
方法:HPAds をタキシフォリン添加または無添加の分化培地で 16 日間培養し、分化への影響を検討した。16 日目に、脂肪細胞内の脂肪量と分化関連遺伝子(PPARγ、C/EBPα、adiponectin、CD36、GLUT4 mRNA)の発現量を、それぞれ Oil Red O assay とリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応法を用いて測定した。培地中のアディポネクチン濃度は、酵素結合免疫吸着法(ELISA)を用いて測定した。炎症に対するタキシフォリン効果は、15 日間分化させた成熟脂肪細胞を用いて評価した。成熟脂肪細胞を、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)または TNF-α+タキシフォリンを含む分化培地で 3 時間インキュベートした後、培地中の炎症性サイトカイン、インターロイキン 6(IL-6)レベルを ELISAを用いて測定した。
結果:脂肪細胞への分化過程におけるタキシフォリン添加は、脂肪細胞中の脂肪蓄積量および培地中のアディポネクチンレベルを低下させた。C/EBPα、アディポネクチン、CD36、GLUT4mRNA の発現量も減少させたが、PPARγ mRNA の発現量は減少させなかった。タキシフォリンは成熟脂肪細胞において、TNF-α により誘発された培地中の IL-6 レベルの増加を抑制した。
結論:これらの結果は、タキシフォリンが脂肪細胞に対して分化抑制作用および抗炎症作用を有することを示唆している。
タキシフォリンは、肥満やメタボリックシンドロームの治療薬としての可能性が期待される。